第75回 税理士試験 財務諸表論 模範解答・解説・講評

ご利用に当たっての注意事項
⑴ 掲載内容は、専門学校 東京CPA会計学院・CPA税理士ゼミナールが独自に作成したものであり、試験実施機関における本試験の解答、配点、配点箇所並びに出題の意図を保証するものではありません。
⑵ 掲載内容は2025年8月8日現在のものであり、今後予告なく変更を行う場合もございます。
⑶ 掲載内容を利用したことによりいかなる損害が生じたとしても、当校は一切補償を行いません。
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第一問

問1 討議資料 財務会計の概念フレームワーク
 概念フレームワークの第4章「財務諸表における認識と測定」からの出題でした。「取得原価」と「市場価格」の定義を空欄補充で問う内容でしたが,語群からの選択であったため,正解が望まれます。概念フレームワークの全体を理解すると,他の会計基準で学習した知識と知識が有機的に結びつき,より理論の解像度が上昇します。

問2 資産除去債務に関する会計基準
 資産除去費用を引当金処理する処理方法とその問題点からの出題でした。過去にも「引当金処理」の方法や「両建処理」の根拠は問われていますので,過去の問題を解いたことがある受験生は手応えがあった問題だったのではないでしょうか。しかし,問題文の配点からこの記述の占めるウェイトが重いため,キーワードを拾いながら正確な記述ができるかが鍵となります。

問3 収益認識に関する会計基準
 収益認識の基本原則とその方法論からの出題でした。最初の問いは,基本原則の空欄補充の問題は確実に正解したいです。次の問いは,基本原則を達成するための方法論である5つのステップに関連する選択問題でした。この問題は,収益認識に関する会計基準をしっかり学習していた方は正解できたと思いますが,仮にできていなくても合否に与える影響は限定的だと考えられます。最後の問いは,資産に対する支配の定義を問う記述問題でした。この問題は,収益認識の考え方の肝となる「支配」概念を問うています。これは,収益認識をしっかりと理解するには非常に重要な概念です。普段の学習で根本をしっかりおさえる学習をしているのか,それともしていないのかで差が生まれた問題であったと推測します。

 第一問のボーダーラインは18点位になると思われます。

第二問

問1 退職給付に関する会計基準
 比較的基本的な論点からの出題でした。最初の問いは,退職一時金制度と企業年金制度を採用している場合の「退職給付費用」,「年金資産の期末残高」及び「退職給付債務の期末残高」を問う計算問題でした。難易度は低いですが,期首の退職給付債務残高に期首に発生した過去勤務費用が反映されているかどうかを判断しなければなりません。問題文に「当期の利息費用は期首の退職給付債務に割引率…」との記載があるため,期首の退職給付債務残高は改定後の金額ではなく,改定前の金額として解答を作成しています。次の問いは,年金資産の表示方法について問う記述問題でした。これは,退職給付会計を学習する上で,重要論点です。しっかりとキーワードを織り込んで正確に記述できたかどうかがポイントになります。最後の問いは,過去勤務費用を遅延認識する根拠を問う記述問題でした。これも上記同様に,基本問題であるため,正確な記述が求められます。

問2 研究開発費等に係る会計基準
 問1と同様に基本的な論点からの出題でした。最初の問いは,前提条件から「ソフトウェア償却費」と「研究開発費」の金額を問う計算問題でした。どの支出が資産計上され,どの支出が費用計上されるかの正確な判断が求められますが,多くの方が正解できたと推測します。次の問いは,自社利用のソフトウェアに係る会計処理の空欄補充の問題でしたが,語群からの選択問題だったため,上記同様に正解率は高いと推測します。最後の問いは,市場販売目的のソフトウェアの製品マスターの資産性を問う記述問題でした。基本問題であるため4つのキーワードを正確に記述できたかが鍵となります。

 第二問のボーダーラインは17点位になると思われます。

第三問

 会社法及び会社計算規則に基づく貸借対照表,損益計算書及び株主資本等変動計算書の作成に関する問題でした。今回の問題は,応用力よりも,基本項目について,期間の計算や読み取りをミスなく行う能力が求められています。比較的容易に解答できる箇所が多いため,高いレベルでの解答作成能力が必要です。集計が煩雑になる繰延税金資産,販売費及び一般管理費などの項目は後回しにすると見極め,その他の項目をいかにスピーディーに,ケアレスミスを極力防ぎながら解答できたか否かがカギとなりました。

 第三問のボーダーラインは35点位になると思われます。

合格ボーダー
 全体のボーダーラインは70点位になると思われます。

本試験講評
 第一問と第二問の理論問題は,空欄補充は語群からの選択問題であったため,解答しやすかったと推測します。記述問題は,各論点で重要度が高い基本問題が多かった印象です。こういう問題の場合は,しっかりとキーワードを使いながら解像度を上げて丁寧に記述できたかで合否が決まると言っても過言ではないでしょう。
 第三問の計算問題は,基本項目のスピーディーな解答が求められていました。そのため,日頃の問題演習の際,解答スピードを意識し,財務諸表の金額をダイレクトに計算できる能力が求められます。単に仕訳を集計して,意味を理解できていない金額を解答するのではなく,財務諸表に記載される金額がどのような意味を持つのかを意識しながら問題に取り組むことをお勧めします。

解答 – 解説 –


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