第143回 日商簿記検定試験 講評・模範解答

第143回日商簿記検定試験の講評・模範解答(予想配点箇所を含む)・解説を公開いたしました。

1級 ・2級 ・3級

1級

日商簿記検定1級講座 商業簿記 講師:山内樹

講評

受験生のみなさんお疲れ様でした。 商業簿記は、損益計算書の作成を中心に他の財務諸表項目の金額を問う問題でした。問題量に関しては、会計学と合わせると平均的なボリュームではなかったでしょうか。 また、内容に関しては、1級の範囲の中から最も基本的な処理事項が幅広く出題されていましたが、確実に解答して頂ければ十分に合格点を狙える内容でした。

出題の特徴

商品売買取引、退職給付取引、有価証券取引、有形固定資産取引、資本取引、税金等大きな柱としては6つの取引が出題されました。
各取引も基本的な内容でしたが、問題の決算整理前残高試算表の金額がどこまでの処理が行われて算定されたものかを正確におさえておかなければ、いくら基本的な取引の決算整理仕訳ができても解答にたどり着くことはできません。

アドバイス

商業簿記は、決算処理を中心に問われる問題がほとんどです。それに加えて、再振替仕訳の未処理や期中取引の訂正仕訳等も行う必要があります。そこで肝要になるのは、先述しましたが、決算整理前残高試算表の金額がどのように算定されているのかを理解することです。
つまり、点(決算整理仕訳)で複式簿記を学ぶのではなく線(全体像又は一巡)を常に念頭において学んで頂けると学習効率は各段に上がると思いますし、なにより楽しくなると思います。

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会計学

日商簿記検定1級講座 会計学 講師: 鯖江悠平

講評

検定試験お疲れさまでした。今回の問題も、基本的なところから細かいところの会計処理まで幅広く問われているような気がします。そのため、第1問で4か所程度、第2問で基本となるところ及び第3問は完答できると合格点は狙えた問題であると思います。

出題の特徴

第1問:空欄補充に関する理論問題でした。計算との結びつきが強い空欄補充であるため、しっかり解答してほしいと思います。

第2問:在外子会社の資本連結に関する問題でした。のれんを子会社の修正仕訳で計上する方法であるため、細かい内容だと思います。また、為替換算調整勘定の取り扱いについは、為替換算調整勘定の発生原因を理解していないと解答は難しいと思いますので、解答できなくても合否に影響はないと思います。

第3問:工事契約に関する問題でした。ついに出題されたと思われた方も多いと思います。この工事契約の問題は、基本的な内容ですので、ぜひ完答していただきたいと思います。

アドバイス

最近の傾向として、会計学では連結会計に関する知識が幅広く問われているように感じます。この連結財務諸表は、個別財務諸表を基礎として作成されます。そのため、個別財務諸表を作成できることが大前提であることは言うまでもありません。
しかし、受験生の皆さんは、試験に出題される連結会計に目が向いていることだと思います。前述のとおり、基本となることは個別財務諸表の会計処理を理解することであり、試験に振り回されることなく、基本を大切にして学習を進めて欲しいと思います。

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工業簿記

日商簿記検定1級講座 工業簿記 講師:松葉崇史

講評

検定試験お疲れ様でした。 今回の工業簿記は、単純総合原価計算と原価差異の会計処理原則の理論に関する出題でした。仕損費、減損費の処理方法など基本的な論点が問われており、それを3カ月分計算するため、計算量にボリュームがあります。90分という制限時間の中で解答できそうな箇所を押さえることで、合格ラインに達することが出来ます。

出題の特徴

第1問:仕損費、減損費の処理方法や原料の追加投入、製造間接費の差異分析等の基本的な論点と合わせて、各月のつながりを単純総合原価計算で問うています。
例えば、当月の月末棚卸資産は翌月の月初棚卸資産となる、3月末に繰り越される原価差異は、1月、2月の原価差異も含むなど、各月の金額を算定して終わりではないため、留意する必要があります。

問2:原価差異の会計処理に関する語句の選択になります。差異分析のみでなく、その差異の会計処理がどのようになるか、原価計算基準を読んで確認していただきたいと思います。

アドバイス

総合原価計算の製造原価の計算、差異分析は、計算方法をパターンで押さえやすい単元ではあります。したがって、金額を算定しただけでその単元を理解したつもりになりますが、実際には、財務諸表作成目的等を達成するために行われています。したがって、本来は製造原価の算定と財務諸表作成の叩き台となる勘定とのつながりを意識しなければなりません。
各月のつながりも含めてですが、学び方のコツとして一つ一つの単元を点で学ぶのではなく、線で捉えるような学習をしていただければ、より一層理解の濃い学びを行うことができるのではないでしょうか。

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原価計算

日商簿記検定1級講座 原価計算 講師:緒方将大

講評

検定試験お疲れ様でした。今回の原価計算は、品質原価計算をベースとした意思決定の問題でした。販売する製品Xの市場は競争が激しいため、本問のように、品質原価の管理体制を徹底して見直し、どうすれば製品が売れるか、機会損失を出さずに済むかを常に考える必要があります。
本問の場合は、品質原価計算が理解できていなくとも、問題をよく読み、問われていることが何かを考えることができれば十分合格点に届く問題であったかと思います。その反面、問題条件を履き違えてしまうと、足切点となってしまう可能性があり、他の科目で高得点を獲得しなければなりません。 したがって、より落ちついてケアレスミスを防ぐことが重要だったと思います。

出題の特徴

問1:語群が多く、確実な理解が無くても解ける問題でした。問2と比較しても、完答が望まれるような問題です。ただ、なぜその用語になるのか、なぜその数値になるのかを今一度考えてみることで、理解を次に繋げることができるでしょう。

問2:問1の資料を踏まえた、最終的な意思決定に関する問題です。第1案と第2案の差額はどの部分であるかをきちんと理解して解答しましょう。なお、製品X1台当たりの固定費は埋没原価になる点に注意してください。

アドバイス

今回の原価計算は、内容は応用的でしたが、解きやすい問題だったと思います。ただし、過去問題の解き方を覚えるパターン学習をされていた方は、考える力が発揮できず、難問に感じられたかもしれません。合格するためにもそうですが、何よりも社会で自分の実力を発揮するために、計算手順を覚えるのではなく、個々の論点の理解を怠らず、常に考える姿勢で日ごろの学習を追及するようにしていただきたいと思います。

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2級

日商簿記検定2級講座 講師 商業簿記:杉山 亜夢里・工業簿記:緒方 将大

講評

検定試験お疲れ様でした。第143回の検定試験では、第2問がやや難しいですが、その他の問題が基本的な問題であったため、全体的には平均的なレベルの出題と思われます。

出題の特徴

第1問:いつも通り仕訳問題です。改正部分の出題はなく、過去の問題と類似するものであるため、完答したい問題です。

第2問:固定資産に関する問題です。固定資産の種類が多く、総勘定元帳及び固定資産管理台帳の記入と解答量も多いため、いかに正確に、そして迅速に解答できるかがポイントとなります。 なお、改正部分であるソフトウェアの出題がありましたが、通常の固定資産と同様に考えればよいので、難しくはなかったかと思います。ただし、貸借対照表を作る問題では、ソフトウェアは無形固定資産になる点に注意してください。

第3問:損益計算書に関する問題です。改正部分の出題が一部(クレジット売掛金、その他有価証券)ありましたが、損益計算書作成上は直接関係するものはなく、出題も基本的な論点の出題でした。

第4問:個別原価計算に関する問題です。個別原価計算の場合、製造指図書原価が当月の売上原価に計上されるか、または仕掛品や製品として棚卸資産に計上されるのかを原価集計表の備考欄により判断するため、注意が必要です。

第5問:標準原価計算に関する問題です。シンプルな差異分析の問題ですが、有利不利の判断を借方差異と貸方差異で問われています。したがって、差異が計上されるときの仕訳、勘定記入をイメージできるかが理解への鍵となります。

各設問の合格点の目安

今回の本試験で合格点を得るためには、第1問で16点(4問)以上、第2問で12点以上、第3問で14点以上、第4問で14点、第5問で16点以上取る必要があると思われます。

アドバイス

商業簿記については、改正後初めての試験であったため、あまり難しい論点の出題はありませんでしたが、今後は改正内容を含む問題が多く出題されることが予想されます。過去問題をパターン的に解くだけでは対応できないため、理屈を自分の中でしっかり確認しながら、新論点のインプットを進めていく必要があります。

工業簿記については、今回も基本的な問題で、商業簿記とは逆にパターン的に過去問題を解いていれば合格点に十分届くと思います。しかし、将来的に仕事に就く事を考えれば、それではいけません。答えの無い問題だらけの世の中で自分なりの最適解を提案し、それを相手に納得させるだけの「説明」を行う必要があります。

商業簿記も工業簿記も、自分なりの納得する理屈を考えながら学習を進めて頂きたいと思います。資格を取る事ばかりに目を向けず、絶えずその先の仕事を目標に学ばれると、社会に貢献できる素晴らしい人財となることができるはずです。

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3級

日商簿記検定3級講座 講師:鯖江悠

講評

受験生の皆様、検定試験お疲れ様でした。全体的に平均的な内容であると思います。 各問の講評を、以下で具体的に確認していきたいと思います。

出題の特徴

第1問:仕訳に関する問題でした。しっかり文章を読み、落ち着いて解答できたかどうかがポイントだと思います。特に、5の問題では、税金という言葉に反応して租税公課と解答している人もいたのではないでしょうか。

第2問:補助簿の選択に関する問題でした。特に難しいところはありませんので、完答できる問題であったと思います。

第3問:勘定から残高試算表を作成する問題でした。初めての形式であるため戸惑った方もいらっしゃったかもしれませんが、複式簿記の基本は、仕訳→勘定記入であるため、基本に忠実に学習されている方は完答できる問題だと思います。

第4問:伝票の推定に関する問題でした。基本問題ですので完答したい問題です。

第5問:精算表の作成に関する問題でした。基本的な内容ですのでしっかり解答してほしいと思います。

各設問の合格点の目安

今回の本試験で合格点を得るためには、第1問で12点以上、第2問で8点以上、第3問で20点以上、第4問で6点以上、第5問で24点以上取る必要があると思われます。

アドバイス

最近の日商簿記検定3級の問題は、どこかに新しい出題方法を取り入れているように感じとれます。例えば、今回でいうと第3問です。
第3問は、簿記の検定試験では日頃おろそかにされていた勘定記入面から残高試算表を作成させる問題です。日頃の学習で仕訳を切って満足している人にとっては非常に解答しにくい問題であったと思います。 そのため、今後の学習においては、仕訳を切って終わらせるのではなく、勘定記入までしっかり行うことを心がけましょう。

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※本講評・模範解答(予想配点箇所を含む)・解説は、東京CPA会計学院・CPAビジネスゼミナールの講師陣並びにスタッフが作成したものであり、模範解答並びに予測配点箇所について、日本商工会議所における実際の解答並びに配点箇所との整合性を当校は何ら保証致しかねます。

※解答・解説は、PDFファイルとなっております。こちらのWEBサイトよりAdobe Readerのダウンロードをお願い致します。

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